2024年11月 吉崎柳歩選
課題 「鼻」
集句 157句
入選 17句(うち佳句3句、秀句3句)
入選句
1 降る雨に今日の出鼻をくじかれる 甲斐良一
2 鼻息は荒いがちょっと気が弱い 大島ともこ
3 勢いが鼻の形に現れる 松長一歩
4 蒲焼きの味も試してみたい鼻 福村まこと
5 天狗の鼻存在感があり過ぎる 村上佳津代
6 低すぎても大き過ぎても困る鼻 松長一歩
7 鼻息は荒いが足が動かない 平尾定昭
8 コロナ禍で初めて知った鼻うがい 春日綾乃
9 鼻の差で負けたことならたんとある 髙杉 力
10 愛犬の鼻に尋問されている 澁谷さくら
11 鼻づまりに備えて鼻の穴二つ 橋倉久美子
佳句 鼻呼吸しておっぱいを飲んでいる 三村 舞
佳句 赤ちゃんの象も釣り合いとれた鼻 天根夢草
佳句 中央でなくてはならぬ鼻の位置 足立ミツエ
秀句 威張らないように言い聞かされた鼻 橋倉久美子
秀句 ウイルスの通過を検知できぬ鼻 西山竹里
秀句 性能に問題はない低い鼻 甲斐良一
選 評
佳句 鼻呼吸しておっぱいを飲んでいる 三村 舞
鼻呼吸しないと窒息してしまうと、赤ちゃんは本能で知っているのだろう。ビールを一気飲みしている自分と同じだと、観察している作者。
佳句 赤ちゃんの象も釣り合いとれた鼻 天根夢草
ライオンやカバ、その他の動物と比べてみても、象という動物は特異な鼻を持っている。赤ちゃん象も象として「釣り合いがとれている」鼻だと、私も納得させられた。
佳句 中央でなくてはならぬ鼻の位置 足立ミツエ
「なくてはならぬ」から神さまは中央に配置したのだろうか? 神さまに聞いてみないと分からないが、中央でないとバランスを保てないのは確かだ。
秀句 威張らないように言い聞かされた鼻 橋倉久美子
「威張らないように」鼻は誰から「言い聞かされた」のだろう。もちろん鼻の持ち主からである。自分の鼻を擬人化したところ、その措辞も愉快だ。
秀句 ウイルスの通過を検知できぬ鼻 西山竹里
匂いならすぐに検知できるのに、ウイルスの通過は検知できない鼻。感染したあとで通過したことを医者から告知されることになる。誰も気付かなかった(たぶん)発見の川柳。
秀句 性能に問題はない低い鼻 甲斐良一
低い鼻であろうと団子鼻であろうと、「性能に問題はない」と慰めてくれる作者、いや、作者自身が開き直っているのかも知れない。いずれにしてもその通りなのだから、気にしないようにしよう。